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1121話

不思議な気持ちを抱えたまま、趙天明も足早に立ち去った。

「やはり単純な人物ではないな。今夜はもう少しで見つかるところだった」

趙天明の姿が夜の闇に完全に消えると、道端に潜んでいた一つの影が現れ、独り言を呟いた。

薄暗い新月の光はほとんど無きに等しく、暗闇から現れた彼は黒装束に身を包み、頭部まで覆い隠していた。その顔を見ることはできなかったが、遠くからでも彼から漂う不気味な気配を感じ取ることができた。

「どうしてこんなに遅くなったの」

趙天明がアパートに戻るとすぐに、貝宝児がスリッパを差し出した。

「ちょっとした問題に遭遇してね、時間を取られてしまったんだ」

趙天明は軽く笑いながら...