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980話

同じ時間に、旭さんたちも立ち上がり、浩子はワイングラスに残った赤ワインを二口ほど飲み干してから、一緒に歩み寄ってきた。

「兄弟たち、揉め事だ」

床に倒れた警備員が大声で叫ぶと、周囲から何人もの警備員制服を着た男たちが現れた。その時、林川は秦悦の隣にいる「道化師」が、林川たちの方をニヤニヤと見ているのに気づいた。

林川が視線を向けると、そいつはさらに挑発するように眉を持ち上げてきた。林川はその場で頭に血が上り、怒りが全身を支配した。

「てめぇら、どけよ」

後ろから旭さんの声が聞こえ、彼は林川の横に立つと、警備員を乱暴に押しのけた。旭さんの凶悪な形相を見て、警備員は言葉を失い、先ほどまで...