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972話

林川はタバコに火をつけ、ソファにもたれかかった。「俺は半生を生きてきて、初めてこんなに深く女を愛した。なのに俺たちの間の関係ときたら、何とも居心地の悪いものだ。この想い、言いたい言葉、全て永遠に口にできないものばかりだ。夢の中でも彼女、目を開けても彼女、全てが彼女だ。自分がいつか、こんな狂おしいまでに誰かを好きになるなんて、本当に考えもしなかった」

「やっと希望が見えたと思ったら、結局は水の泡だ。浩子、希望で満ちあふれていたのに、どん底まで絶望する、あの感覚が分かるか?時々思うんだ、もう二度と他の女をこんなに好きになることはないだろうって。俺の全てが、あの姿に占められてしまった」

林川は顔...