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861話

林川の心は静かだった。緊張の欠片もなく、これから何が起きるかも分かっている。こんな心境は初めてだ。すべてがどうでもいいという態度で、非常に玄妙で、非常に狂気じみていた。

車内で、運転手はバックミラー越しに林川を一瞥し、笑いながら言った。「お兄さん、何かあったのかい?トラブルなら警察に通報した方がいいよ。携帯持ってないなら、俺が手伝うけど」

林川は首を振った。「大丈夫です」

すぐに携帯を取り出し、浩子に電話をかける。相手はすぐに出た。「小川か?」

「そっちの状況はどうだ?」

浩子の話し方は切迫していた。息を切らしながら声を潜め、とても小さく言った。「状況は芳しくない。こっちは五台の車、...