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720話

話しながら、彼は林川の向かい側に歩み寄った。

チベット犬を目にした瞬間、すでに落ち着いていた感情が一気に爆発した。心の中では、あの畜生を一発で撃ち殺してやりたいと思わずにはいられず、全身がその場で震えていた。

そのとき、隣にいた旭さんが腕で林川を小突き、声を潜めた。「小川、冷静にしろよ。自分の感情をコントロールする術を学ばないとな」

林川は七、八回ほど冷たい空気を深く吸い込み、荒ぶる感情をかなり抑え込んだ。顔を上げて彼を見つめ、「お前がチベット犬か?」

彼は好奇心に駆られて林川を一瞥したが、その表情から察するに、林川たち二人の素性を見極められないようだった。彼にとって、林川と旭さんは見...