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712話

「でも、藏獒のやつは身内に対しては、少しは人間性があるんだ。付き合いはほとんどないけど、心の中では姉さんを敬っているらしい」

林川は軽く笑った。「それなら話は簡単だな。その姉さんはどこに住んでるんだ?」

浩子は酒を一口飲み、舌なめずりをしながら、表情もだいぶ和らいだ。「幸福花園マンションのA棟4階402号室だ。一人暮らしで、近くのカラオケ店でホステスをしてる。だいたい毎晩2時頃に帰宅するんだ」

旭兄は顔を上げて林川を一瞥し、何か言いかけたが、林川は手を振った。「みんな、そんな顔で見るなよ。食べて、飲もうぜ。久しぶりに会ったんだからさ」

浩子は微笑んで杯を持ち上げた。何杯か酒が進むと、雰...