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690話

「少なくとも、私たちが安心できるようにしてからじゃないと、ここを離れられないわ」

今夜、阿峰がいなければ、林川は楊潔がこんなに悲惨な家庭環境にいたなんて全く知らなかっただろう。彼女の立場に立って考えれば、彼女がしてきたことも納得できる。

かなりの部分で、彼女と林川はよく似ていた。貧乏に怯え、そういう生活を経験したことがなく、一食食べられて次は空腹という感覚がどんなものか全く分からない。

お金を稼ぐためなら手段を選ばず、良心なんて糞くらえで、金こそが全てだ。かつて、この考えは林川の人生観の中で根深く根付いていた。空腹のとき、他人が新しい服を着ているのを見たとき、良心は林川のこれらの悩みを解...