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1009話

「よかった」武さんはほっと息をつき、その瞬間、彼から何かが消え去ったように、すっかり元気のない様子になった。林川はしばらく考えてから、歩み寄って彼の体に縛られたナイロンロープを解きながら、にこやかに言った。「あの十万元だけど、遅くとも明日の朝には振り込むよ。今は銀行も閉まってるから、今すぐ送りたくても無理なんだ。どこに行きたいかは君の自由だよ。口出ししないって言ったからね、本当に干渉しないよ」

武さんは立ち上がり、林川からタバコを一本もらうと口にくわえ、諦めたように苦笑した。「わかった。その十万元を振り込んでくれるなら、それが一番だ。振り込まなくても、俺にはどうすることもできないがな。どうせ...