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842話

二人が静かに屋上に上がった後、李有金が屋上階段の扉を開けると、二人は広々とした人目のない場所に出た。

王珊はエレベーターで先ほど確認した階数表示通りに最上階に着くと、左右の住居ドアを不審そうに見回した。そのわずか数秒の間を置いて、王珊は非常階段の方へ足を向けた。

階段を上り詰め最上階の非常ドアの前に立った王珊は、普段は施錠されているはずの防火扉のノブを試しに回してみた。するとわずかな力で簡単に開いてしまった。

本来なら部下の怠慢に対する怒りを感じるべき場面だが、今の王珊は胸の内に興奮が抑えきれないほど湧き上がっていた。盗み見るというあの刺激的な感覚が強烈に彼女を支配していた。

この時の...