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870話

「ハミングしている声から女性だと断定できるな」

それは彼女の母親に違いない。

だが、彼女の母親はもうあんな年齢で、そんな艶やかな歌を口ずさむはずがない。となると静姉しか考えられない。

浴室から聞こえる水音に、静姉のしなやかな体が頭の中に浮かび、体内の欲望が徐々に燃え上がってきた。勇気も少しずつ湧いてきて、木の板の隙間に向かって腰を屈めた。

だが、しゃがみ込んだ瞬間、彼女はすでに体を洗い終え、ドアを開けて出てきた。ドアに身を寄せていた私はバランスを崩し、そのまま中に転がり込んでしまった。

「きゃあ!」

彼女も私に驚いて悲鳴を上げ、私は体を縮こませて慌てて立ち上がり、彼女の口を押さえて...