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629話

「なんだ、無名の私が、平凡そうに見えるのに、兄貴の鉄砂掌の威力をこんなにも無視できるとはね?」

「名前は何だ?俺は名もない者は斬らない」

俺の実力を知った後、叶兄貴は本当に軽々しく手を出せなくなった。鉄板を蹴ってしまうことを恐れ、後悔しても取り返しがつかなくなるからだ。

叶兄貴のその様子を見て、傍に立っていた毛八の顔色も完全に曇った。彼はようやく今日、大きな災難に巻き込まれるかもしれないと気づいたのだ。

叶兄貴さえも軽々しく冒せない人間を、毛八はどうしてこんな不運にも、挑発してしまったのだろう!

しかし、それでも毛八は相変わらず余裕の表情を崩さなかった。自分がそこまで運命の凶星に出会...