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625話

「この光景は、今まで海辺に行ったことがあっても、一度も見たことがないね。この少年はとても華奢で、海水パンツ一枚だけを身につけていた。断続的な日差しを浴びているから寒くはないだろうけど」

「でも、彼の歌声には何とも言えない哀愁があって、どこか言葉にできない物語を連想させる」

少年の前には大きな器が置かれていて、その中には既に1毛や1元などの小額紙幣が山積みになっていた。でも私にははっきりわかっていた。あの器に入っている小銭を全部合わせても100元にも満たないだろうということを。

上海のような消費都市では、100元では少年の一日の生活費にさえ足りないのだ。

このような路上ミュージシャンは実...