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6話

軍用車は猛スピードで病院へと戻った。

媚びへつらう表情の運転手がタクシーに乗って手を振りながら去った後、陸沢はようやく振り返り、部下の一人に命じた。「地元の警察に連絡を入れて、この男の身元を調べるよう伝えて」

「はい、少佐」

部下は即座に直立不動の姿勢で力強く返答した。

「隠れた実力者か」

陸沢は目を細め、タクシーが去った方向を見つめながら、皮肉めいた表情で独り言を呟いた。

彼女には信じられなかった。一般のタクシー運転手が、市街地の車の往来が激しい道路で時速100キロも出しながら、一台の車にもぶつからずに走れるなんて、そんな腕を持っているはずがな...