4話
「私が言ったでしょう！あのろくに医師免許も持っていない藪医者のせいよ！私の息子に問題を起こしたんだわ！皆さん、刑務所行きの覚悟はできてるでしょうね！特にあの犬畜生！死ななきゃダメなのよ！」李雪雯はまるで天が崩れ落ちたかのように、怨婦のように叫び声を上げた。
鐘龍はそれを聞いて、表情が険しくなった。中心病院の院長として、こんな風に罵られたことなど今までなかったのだ。
「黙りなさい！鐘院長がどう言うか聞きなさい！」蘇洪洲は鐘龍の表情が険しくなるのを見て、すぐに冷ややかに鼻を鳴らし、焦りながら鐘龍に目を向けた。
鐘龍は意地の悪い李雪雯をちらりと見て、口を開いた。「お子さんはまだ昏睡状態ですが、大きな問題はもうありません。ただ、病院での経過観察が必要で...」
鐘龍がまだ言い終わらないうちに、李雪雯は甲高い声で叫んだ。「あなたたち医者は何のためにいるの！私の息子があなたたちの病院で治療を受けるのは、あなたたちの光栄なことよ！まだ観察だなんて！確実な結果を出しなさい！さもないと終わりよ！」
その言葉を聞いて、鐘龍の表情は一気に冷たくなった。「李夫人、少し言葉を慎んでください。私たちの病院は全力を尽くして治療しています。もし私たちの病院が不満なら、転院されてはいかがですか」
鐘龍は二人をちらりと見て、秦子涵を連れて立ち去った。
「鐘院長...」鐘龍の後ろ姿を見て、蘇洪洲は李雪雯を厳しく睨みつけた。「何もできないくせに邪魔ばかりして」
「蘇社長、ご安心ください。私たちがいますから、蘇様のご子息は絶対に大丈夫です。少し休まれてはいかがですか。蘇様が目を覚ましたら、すぐにお知らせします」劉仁強が出てきて、へつらうような表情で蘇洪洲を見た。
蘇洪洲は眉をわずかにしかめ、中に入って様子を見ようとしたとき、鐘龍と秦子涵が一人の老人の後ろについて入ってくるのを見た。
蘇洪洲は大喜びし、急いで近づいた。「鐘院長」
鐘龍は蘇洪洲を一瞥して言った。「こちらは秦老です」
蘇洪洲は驚いた。秦老、江城第一の漢方医の大家だ。まさか秦老が直接来るとは。「秦老、わざわざ息子の治療にお越しいただき、ありがとうございます」
「蘇社長、お気遣いなく。中を見てみましょう」秦老は救急室に入り、蘇木来の体に刺さった銀の針を見て、目を見開いた。「鍼灸だと！？西洋医学との併用治療！しかもこの鍼灸は今まさに命を繋いでいる！素晴らしい！なんと素晴らしい技術だ！」
「これは誰の鍼灸ですか？」秦老は秦子涵と鐘龍を見た。
「若い男性です。確か寧凡という名前で、以前は見たことがありません」鐘龍が答えた。
「素晴らしい腕前だ！すぐに彼に会わせてくれ！」秦老は急いで言った。
ちょうど出てきたところで、蘇洪洲が急いで尋ねた。「秦老、息子は今...」
「大した問題はありませんが、覚えておいてください。今はまだ命を繋いでいる状態です。むやみに動かさないように！」寧凡に会うことを急いでいた秦老は冷淡に言い、秦子涵について寧凡のいる病室へと向かった。
「なんて老いぼれ！あなたにそんな態度をとるなんて！」李雪雯は秦老の態度を感じ取り、すぐに不満を漏らした。
「黙りなさい！彼はあなたが敵に回せる相手ではない！」蘇洪洲は厳しく叱った。
「蘇社長、休憩室でお休みになられてはいかがですか。ここは私たちが見ています」劉仁強は微笑んだ。
蘇洪洲たち二人が去ると、劉仁強は病室を見て、口元に冷笑を浮かべた。「寧凡！本当に運がいいな。しかし蘇様が突然容態が悪化したら、お前が第一責任者だろう。その時に私が治せば、私が功労者になるわけだ」
劉仁強は蘇木来のそばに行き、一連の銀針を見て口元に冷たい笑みを浮かべると、なんと手を伸ばして蘇木来の体から数本の銀針を突然抜き、別のツボに差し替えた。終わると立ち上がって去っていった。
......
秦老は寧凡のいる病室に来た。寧凡はちょうど沈夢と楽しそうに話していた。三人が入ってくると、寧凡親子の視線がそちらに向いた。
「鐘院長、秦主任、何かご用でしょうか？」寧凡は不思議そうに尋ねた。
「寧君、こちらは秦老です。今回は秦老があなたにお会いしたいとのことで」
寧凡は少し驚き、秦老を見た。秦老の身分は彼も知っていた。江城第一の国手だ。ここで会うとは思わなかった。
「こんにちは、秦老」寧凡は敬意を込めて言った。
秦老のことを知って以来、彼はこの先輩の医術を非常に尊敬していた。今は乱古の伝承を得ても、秦老に対する敬意は変わらなかった。
「素晴らしい！若くしてこのような医術を持つとは、非常に優れている！」秦老は鋭い目で寧凡を見つめた。寧凡がこれほど若いとは思っていなかった。
「秦老がいらした理由は？」寧凡は少し不思議に思った。秦老が自分に会いに来ただけとは思えなかった。
「私は寧君の鍼灸の技術に非常に興味があります。ぜひ交流させていただけないでしょうか？相応の対価はお支払いします」秦老は期待に満ちた表情で寧凡を見た。
隣では、秦子涵が驚きの表情を浮かべていた。彼女はこれまで祖父がこんなに若者に頭を下げて話すのを見たことがなかった。
目の前の若者の医術は本当にそれほど優れているのだろうか？寧凡が自分の両親を救い、さらに蘇木来の命を繋いでいるとはいえ、秦子涵は依然として寧凡の医術が祖父より優れているとは信じられなかった。
「構いませんよ。ただ、夜にしましょう。今は母の看病をしなければなりません」寧凡はためらいながらも、うなずいた。
「それは素晴らしい！寧君のお越しをお待ちしています」秦老の目が輝いた。
ドアを出ると、秦子涵は外に立ち、唇を尖らせて、なぜ祖父が寧凡にそのような態度をとるのか理解できなかった。
「お爺さん、彼は本当にそんなに凄いの？私には大したことないように見えたわ。確かに医術を見せたけど、お爺さんにはかなわないと思うけど」
「さっきの鍼灸の技術は非常に優れている。私にはできないと断言できる」秦老はわずかに首を振った。
「院長、院長、大変です！蘇様が！蘇様の容態が悪化しました！すぐに来てください！」そのとき、一人の看護師が焦った表情で鐘龍に言った。
「何だって！すぐに案内しなさい！」鐘龍は大慌てで言った。李雪雯に不満はあっても、蘇木来はこの病院の患者であり、治療しなければならない。
救急室では、主要な科の主任たちが混乱していた。蘇洪洲夫妻も知らせを聞いて、焦りながら傍らで知らせを待っていた。
「蘇社長、ご心配なく。蘇様のご子息は絶対に大丈夫です、ご安心ください」劉仁強はそう言いながらも、顔は極度に緊張していた。彼はただ銀針を抜いただけなのに、蘇木来が危篤状態になるとは思わなかった。
劉仁強は手が震え、手術の準備をしようとしたとき、秦老の声が響いた。「待て！」
秦老は蘇木来を一目見て、眉をしかめた。「私は言ったはずだ。彼はまだ命を繋いでいる状態だと。むやみに動かすなと。誰がそんな大胆なことをした？銀針を動かしたのは！」
「...」
誰も口を開かなかった。
蘇洪洲の表情は暗く沈んだ。「誰が動かしたんだ、すぐに名乗り出ろ！でなければ調べ上げて、容赦しないぞ！」
「くそっ、誰だ？もし息子に何かあったら、お前も生かしておかないからな！」李雪雯の目は赤く、人を食いそうな勢いだった。
劉仁強は皆の後ろに立ち、体をわずかに震わせていた。彼はただ蘇木来に少し問題を起こさせ、自分が救うことで寧凡を陥れ、自分が功を奪おうと思っただけだった。しかし、大きな問題になるとは思わなかった。