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345話

夏紫馨も当然、この黒装束の男の邪悪な意図に気づいており、その表情はさらに冷たさを増した。

傍らにいた夏幼南は顔をわずかに明るくさせ、すぐに夏紫馨の側へと駆け寄ると、姉を見つめながら言った。

「姉さん、聞いたでしょう?こいつは最初から私を見逃すつもりなんてないんだよ。こんな風に侮辱されるくらいなら、命を賭けて戦った方がマシだよ。姉さん、二人で力を合わせれば、こいつが必ず勝てるとは限らないよ!」

夏幼南の言葉を聞いても、夏紫馨は何も答えず、沈黙に沈んだ。弟の言葉に、彼女はあまり同意できなかった。

確かに二人の実力は見せている以上のものがある。だが目の前の男は武象境の強者だ。人象境と武象境の差...