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829話

「でも、よく考えたら、真相は分からない。この気持ち悪い男の言うことが全て真実とは限らない。むしろ自分の性欲を満たすために嘘をついているかもしれない」

私はちょっと考えた。たとえ彼が妻に秘密を話したとしても、妻は絶対に信じないだろう。この気持ち悪い男に対する妻の印象はあまりにも悪すぎるからだ。

私は彼の言葉を無視して歩き続けた。

「兄貴、そんな冷たいなよ。あの日、兄貴が俺に『このことを口外しない』って誓約書を書かせたじゃん?兄貴のサインもあるやつ。帰る時に持って行くの忘れてたから、今俺が持ってるんだけど」背後の気持ち悪い男が、しつこく声をかけてきた。

その言葉を聞いて私は足を止めた。あの...