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1498話

寺の中は人が多かったが、皆静かにしていた。おそらく寺院内では大声を出してはいけないという道理を心得ているのだろう。

この寺は幾つもの殿に分かれており、段々と上へ上がっていく。大雄宝殿が最も豪華で壮麗であり、釈迦牟尼仏の金身が祀られていた。

私は大雄宝殿で土色の僧衣を身にまとったお坊さんに出会い、すぐに近づいて丁寧に声をかけた。「お師匠さん、こんにちは」

そのお坊さんは少し訝しげに、何の用かと尋ねてきた。

私は来意を説明し、老いた名医の居場所を尋ねた。

「施主のおっしゃるのは老住職のことでしょう。三年前に入寂されました」とお坊さんは答えた。

この言葉を聞いて、私の心は一気に冷え込んだ。

最も恐れ...