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652話

「それならいい」林詩詩は鼻を鳴らすと、階段を上がっていった。

彼女が林夢晴の身を案じているのは確かだが、今の状況では自分が何の役にも立たないことも分かっていた。林小涛の言う通り、このまま下にいれば、彼は夢晴の状況を見ながら、同時に自分のことも気にかけなければならなくなる。一心不乱にはいかず、どこかで失敗するかもしれない。

林詩詩は自分の立ち位置が分からないような人間ではなかった。だから潔く二階へと上がっていったのだ。

林小涛は彼女がようやく上がっていくのを見て、ほっと息をついた。詩詩が頑固を発揮して、猪突猛進で夢晴を助けに行こうとしたらと思うと——そうなれば本当に終わりだった。

しかし...