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1059話

この鋏は、彼の目にはもはや無力な存在でしかなかった。

林小涛は素早くバスローブを脱ぎ捨て、ベッドに上がり、そっと江詩涵の背後に這い寄った……

江詩涵が背後から林小涛に触れられたのを感じた瞬間、思わず体が小刻みに震えた。

だが、これこそが彼女の望んだ芝居がかった演技だった。林小涛のこうした行為に対して、彼女は黙認していたのだ。

少しの身体接触もなければ、天地をも欺くような策略は成り立たず、自分の母親を騙すことなどできないのだから。

これが彼女の思いついた方法だった。林小涛に自分の正面を見せることなく、かつリアリティのある演技ができ、さらに最も大切なものを守ることができる—まさに完璧な策...