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674話

向かってくる人力三輪車を漕ぐ姿は、決して楽そうには見えなかった。しかし、その運転手は依然として懸命にペダルを踏み続けていた。

三輪車の上には赤と青の布で作られた日除けが取り付けられており、遠くからでもはっきりと目立っていた。

こういった車は観光用の私営のものだろう。料金は高めで、ゆっくりと街中を回りながら観光客を案内するのが主な仕事のはずだ。

だがこんな場所まで来ているのは少し奇妙だった。誰がヒマを持て余して、この荒涼とした丘陵地帯まで観光に来るというのか?それに、この辺りには見るべきものなど何もない。

森が大きければ何でも鳥が集まるというが、世の中には本当に暇な金持ちがいるものだ。人...