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672話

秦越は振り向いて老三が指さす方向を見た。

広場の遠くの大きなビルに向かう歩道に、二人の人影が不意に現れていた。

男女一組で、抱き合いながらゆっくりと中へ歩いていく。秦越は目を細めて注意深く見つめた。

五十メートルほどの距離に加え、正午の太陽が直射していて、目が眩むほどだった。

かろうじて見える男の方は、背が高く、薄い青の色落ちしたデニムを着て、髪にも少し灰色が混じっているようだ。

女の方は、ほとんどその男の影に隠れていて、時折姿が見えるだけで、全体は見えなかった。

車内の賀老大たちも二人を凝視していたが、やはり詳しくは見えない様子だった。

「老三、あの二人が双煞だと思うか?」秦越は振り向きもせ...