Read with BonusRead with Bonus

593話

印玺が尤可儿の手に置かれると、淡い翠玉の光を放った。

秦越は玉石などの玩物についてはあまり詳しくなく、はっきり言えば何も知らなかった。

だが義道門の者たちは皆、門主の手に門派の宝である義道門門主の印があることを知っていた。

この玉印は歴代の門主の手で受け継がれてきたという事実は、誰も否定できないものだった。秦越もその真実性を確信していた。

ところが、義道門の歴代門主を祀る掛け軸に、丘処機の名が記されていた。これを見た尤可儿は疑念を抱き、秦越自身も信じ難い思いだった。

丘処機とはどれほどの人物か、そんな者が中原の地にまで来て新たな門派を開くだろうか?

尤可儿は印玺の真贋を見分けることで、この義道...