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586話

物を紛失するという体験は、ほとんどの人が一度は経験したことがあるだろう。中には、わざと失くしたいものもある。

しかし、価値が百を超える——いや、百では格が小さすぎる。価値が千を超えるものから話そう。価値が千を超える、しかも実用的なものをわざと失くすなどということは、大半の人にはできないだろう。

ましてや、連成の価値があり、貔貅の獣が彫られた、手のひらほどの大きさの四角い玉石の印璽をわざと失くすなど、あり得ないことだ。

だが、失くしたものを探すために家を壊すというのは、印璽を失くすよりもさらに珍しいことではないか。

価値ある物が見つからなくなれば、それだけで人は焦るものだ。その上に家まで壊すとな...