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540話

丘胡子は心の中で愚痴をこぼした。自分は世界一の不幸な男になってしまったと。

だがそれでも、彼は微かな物音一つ立てる勇気もなかった。ただ柱の陰に隠れ、段崖が大広間の隅の扉から出てくるのを見つめるばかりだった。

段崖が大股で堂々と庭の東南にある厠へと向かう姿を見て、丘胡子にはわかった。段崖は生理現象を我慢して出てきたのだと。

その歩き方を見ればわかる。大きな足が地面に「カタッ、カタッ」と音を立てて、まさに一歩一歩はっきりとした足跡を残していく。

丘胡子は柱の陰に隠れ、段崖が通り過ぎるのを慎重に見守った。彼に見つかることを恐れて。

そのとき、部屋の中からまた声が聞こえてきた。

「外に誰かいるみ...