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441話

空はまだ完全に暗くなっておらず、しかしアリスレストランは早々に玄関先のネオンを点灯させていた。

絶え間なく色を変えるネオン灯は、まるでこの世界に告げているようだった。今はもう自分の時間だと。夜になると様々な思いを抱く男女の心を揺さぶる時間が始まったのだと。

呉艶の心は今、少し高揚していた。足取りも軽やかになり、時折立ち止まっては手にした花の香りを嗅いでいた。

秦越は思いもよらなかった。他人から譲り受けただけの花束にこれほどの魅力があるとは。秘書がこんなに喜ぶ姿を見て、こう思った。こうなるとわかっていたら、彼女のために特別に花を買ってあげれば良かったと。

呉艶はこの花束を手にして、確かに...