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425話

言い表せない心の乱れが、秦越に逃げ出したいという衝動を与えた。

そして彼が上げかけた手を下ろし、この場を離れようとした瞬間、社長室のドアが内側から開かれた。

目の前に現れたのは呉秘書だった。彼女はいつものように金縁の眼鏡をかけ、ビジネススーツを身にまとっていた。

社長室の前に秦越が立っているのを見た呉秘書は、目を大きく見開いた。とても驚いたような様子だった。

秦越が反応する間もなく、呉秘書は先に一歩踏み出して事務所を出ると、そっとドアを閉め、すぐに秦越の腕を掴んで、廊下の奥へと数歩早足で歩いていった。

秦越は彼女に連れられて歩きながら、この行動...