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416話

浴室にいる秦越は、尤可儿からの呼びかけに応じなかった。

乙女が初めて輿に乗るように、彼も今、初めてこんな経験をしているのだ。

漢服の下は何も着けておらず、裾は臀部のラインをちょっと過ぎたところまでしかない。こんな姿で外の部屋に行って食事なんてできるだろうか?恥ずかしさで死んでしまいそうだ。

秦越は窓のガラスの隙間から外を見た。雨はすでに止み、空には赤い月が浮かんでいた。

そう、真っ赤な月だ。

自然科学的に説明すれば、雨上がりの水蒸気による光の屈折現象かもしれない。しかし秦越が見るその月は、赤さが度を越していた。

朝日よりも赤々と輝き、まるで真っ白な玉盤に血を一杯浴びせたかのようだっ...