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335話

「二十世紀で最も高価なものは何か——人材だ」。この言葉はかつて広く流布していた。二〇〇〇年以前の人々なら皆、印象に残っているだろう。

しかし二十一世紀に入り、同じ問いに対する答えは「所有権」に変わったはずだ。特に知的財産権は、まさに富の宝庫と言える。

ヘンリーから電話があって、秦越の持つ処方の買取を持ちかけられなければ、秦越はその処方の価値に気づかなかったかもしれない。

今やヘンリーは自ら処方の買取価格を1億ドルにまで引き上げてきた。これこそが知的財産権の魅力だ。

だが秦越は心を動かされなかったし、理性を失うこともなかった。これほどの大金が自分に向けられていると聞いて、どんな心境だった...