




2話
主治医の張文はもう諦めかけていた。専門家チームでさえ結論を出せないのだから、彼がどれほど焦ろうとも無駄だった。
次にどう対応すべきか苦悩していた時、その言葉を聞き、彼の蒼白く疲れた顔に突然喜色が浮かんだ。老人が助かる!これで責任を負わずに済む!
しかし、話した人物が何とだらしない格好の若者だと分かった瞬間、彼の顔から喜びの色が消え失せた。まるで突然冷水を浴びせられたかのようだった。
彼が老人の病を治せるだとう?年齢が五十を超えるベテラン専門家たちでも自信がない病気を、二十代の若者が治せると言い切るなんて?
「若いの、名前は?」張医師は重々しく尋ねた。
「秦升と申します、偽りなく」
張医師の眉はさらに寄った。この若者はなんて軽率なのだろう。本当に老人の病を治せるのか?大言壮語を吐いているだけではないのか。
そのとき、ある年配の専門医が老眼鏡を直しながら言った。「秦升?君は外科部門の研修医じゃないか?」
「はい、劉主任。私は研修医です」
ざわっ!
会議室内で、各科の権威ある医師たちは大きな冗談でも聞いたかのように、一斉に議論し始めた。
「ただの研修医がそんな大げさなことを言うなんて!」
「我々ベテランが三十分近く話し合っても結論が出ないというのに!」
「目立ちたがりなだけだろう!」
……
バン!
会議室のドアが突然激しく押し開かれ、壁に強く当たって大きな音を立て、その場にいた全員を驚かせた。
誰がこんなに大胆に専門家会議室に乱入するのか、皆が一斉にその不速の客を見た。
張文も眉をひそめ、その人物を追い出そうとしたところ、入ってきたのは程老人の孫娘・程雪瑶だと気づいた。
程雪瑶の後ろには中年男性が付き従っていた。その男性は非常に体格がよく、サングラスをかけ、黒いスーツを着ていた。誰が見ても、彼女のボディーガードだとわかる。
程雪瑶を見た張文は、顔色が一変し、笑顔を作って言った。「程さん、当院の専門家チームが今、お爺様の治療法について検討しているところです。すぐに結果が出るはずですが…」
程雪瑶はこの言葉を聞くや否や、小さな唇を尖らせ、両手を腰に当てて怒鳴った。「検討、検討って、いつも検討ばかり!もう三十分以上経っているのよ。私の爺さんは危篤なのに、あなたたちの言う専門家は机上の空論ばかり。ここで警告しておくわ、もし爺さんに何かあったら、この病院の存続も危うくなるわよ」
その場にいた全員が顔を曇らせ、黙り込んだ。程雪瑶の叔父が済州市の有名な黒社会のボスであることを知っていたからだ。程家を敵に回せば良い結末は望めない。
「黒鷹、ここを壊しなさい。この専門家たちは当てにならないわ。全員役立たずよ!」
程雪瑶の後ろのボディーガードが前に出た。彼は体をほぐすと、バキバキと音を立て、顔に不気味な笑みを浮かべた。暴力や破壊行為こそ、彼・黒鷹の得意とするところだった。
張文はこの状況を見て慌て、言葉を詰まらせながら言った。「き、君たち、何をするつもりだ?ここは仁康病院だぞ、乱暴はやめろ、法律を守るんだ!」
程雪瑶は軽蔑するように笑った。法律?済州市では、程家こそが法なのだ。「壊しなさい!」と程雪瑶は命じた。
「待て!」突然、怠惰な声が響いた。
さっ。
皆が一斉に会議室の片隅を見た。
程雪瑶は髪が乱れ、目が半分閉じて、まだ目覚めていないような若者を見て尋ねた。「あんた、誰?」
「秦升です。この病院の研修医です」秦升は終始微笑みを浮かべたまま、謙虚ながらも堂々と答えた。