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180話

秦越は冬に対して、もう張り込みなどの行為をしないよう何度も念を押し、冬も素直にそれを約束した。

彼は社長のそばで警護をしている者なら、自分のような総経理よりもずっと手慣れた方法で張り込みができるだろうと信じていた。

義兄が自分と同じことを考えていたなら、安心して任せられる。

秦越は壁際に置かれた人の背丈ほどの柱時計を見た。この種の柱時計は一般家庭ではもう珍しくなっていた。厳家のような古きを尊ぶ人々の手の中でだけ、こういったものが宝物として扱われているのだ。

実際、これは厳氏父子が旧情を大切にする気質の表れだった。彼らが百草堂と生死を共にする精神もそれを示していた。

製薬工場の創業は容...