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171話

秦越は彼女の鼻の下に手をかざして確かめてみたが、ほとんど息の気配を感じられなかった。

「まずい、水を吸い込んでしまったようだ」

溺れた人が慌てて水を飲み込むだけなら、まだ命に関わらないこともある。最も危険なのは水中で息を吸うことだ。水が肺に入り込めば、生存の可能性は極めて低くなる。

先ほど吊り橋で見物していた人々が、今は皆こちらに集まってきて、あっという間に秦越と少女を取り囲んでいた。

秦越は周囲の人々を見回し、大声で尋ねた。「ここに医者はいませんか?どなたか医者の方はいらっしゃいますか?」

秦越がこう尋ねたのは、自分が医者であること、それも超一流の医者であることを忘れていたわけでは...