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1010話

「きっと新たなスリルを求める獲物ができたんでしょうね」

妻の言葉で、すぐに同じマンションに住むあの夫婦のことが頭に浮かんだ。

だが今はそんな話をする時ではないとわかっていた。林志山の方は当面厄介なことにはならないと確認してから、再び目の前の問題に意識を戻した。

こんな状況を知って、不安で落ち着かない気持ちになったが、妻に対する欺かれ裏切られたという怒りはかなり薄れていた。

結局のところ、これからの妻の説明で理解できたことがあり、ただ「なぜこんなことを俺に話さなかったんだ」と腹立たしく言うだけだった。

それに、あの夜妻を迎えに行った時、あいつが妻に連絡先を要求して脅したことはないかと聞いたのに。...