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949話

空気の中に混じる土の香り、深呼吸をすると、心が自然と躍り出す。

蔡淑珍は玄関に立ち、軽く戸枠に手を添えながら、明るい大きな瞳で葉天明の背中をじっと見つめていた。

「葉先生、省都に行ったことありますか?」蔡淑珍は静かに尋ねた。

葉天明が振り向き、蔡淑珍のすらりとした佇まいに何気なく一瞥をくれてから視線を逸らした。「もちろん行ったさ。僕は省都の師範大学を出て、卒業後にここに配属されたんだ」

蔡淑珍の表情には少し恍惚とした色が浮かんでいた。「私、省都に行ったことがあるんです。高層ビルや乗用車があふれていて、街の女性たちはみんなおしゃれで、まるで一輪の花のようでした」

葉天明は笑みを浮かべた。「そうと...