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655話

「電話を切ると、黄秀穎はまたタバコを一本取り出した。これでこの箱の最後の一本だった。部屋の中はすでに煙が漂い、人影も見えないほどだった。

彼女は激しく咳き込み、目から一筋の涙がこぼれた。

朱玉坤に対して特別な感情はなかったが、血のつながりはある。どう言おうと、二十年以上共に生きてきた事実は変えようがなかった。

最後の一本を吸い終えると、ようやく窓を開け、部屋の煙を外に逃がした。窓辺に身を乗り出して新鮮な空気を吸い込むと、頭もだいぶ冴えてきた。

しばらくして部屋に戻ると、普段着のカジュアルな服装に着替えた。わざとそんな目立たない服を選んだのだ。そしてバッグを手に取り、部屋を出た。

彼女は直接病院...