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1210話

車が山々を越えて龍困村の近くに辿り着いたのは、それから三十分も経った後のことだった。その時になってようやく葉天明は深く息を吐き出し、全身から力が抜けていくのを感じた。

まるで空気の抜けた風船のように、彼の精神は萎え、それでも心臓はドクドクと激しく鼓動し続けていた。

楊桃は助手席に座り、葉天明を邪魔しないよう気をつけていた。彼が大きなプレッシャーを抱えていることがわかっていたからだ。

葉天明は荒い息を繰り返し、血の気のない真っ白な顔で、ハンドルを強く二度叩いた。心の中の煩わしさと恐怖を発散させるように。

さっきどれだけ冷静に振る舞っていたとしても、彼の内なる恐怖を隠せるものではなかった。

ほんの...