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353話

「今すぐ身に付けてください。袖の中に入れておけば、誰にも見られませんよ」林隽が突然言った。少し期待するような表情を浮かべている。

「いいわ、あなたが預かっておいて」沈知辞は彼の意図が以前とは違うことを理解しつつも、また同じ手を使ってきたと思った。「ほら、私の今の腕時計はぶつけたりしてるし、仕事中にあれこれ持ち歩くから不便なのよ」

林隽は腕時計を受け取ったが、何も言わず、ただ沈知辞をじっと見つめている。

沈知辞は彼のこの途方に暮れたような表情を見ると、つい心が和らいだ。腕時計を取り戻して言った。「私が自分で持っておくわ」

林隽はようやく嬉しそうな顔になり、沈知辞が起き上がって腕時計をしま...