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231話

この道を歩くのは一度きりだった。あの時は沈知辞に連れられて……

彼が「沈知辞」という三文字を思い浮かべた瞬間、目の前に受付が現れた。

記憶の中と一分の狂いもなく、窓も床も清潔に保たれている。防音が効いているせいか、静寂に包まれていて、彼が動かなければ、まるで時間が止まっているかのようだった。

記憶力のいい彼にとって、受付に座っている男の姿はとても見覚えがあった。

男は以前のようにすぐには彼に気づかなかった。おそらくこのドアから入ってきたため、気づきにくかったのだろう。

林隽はそっとため息をつき、歩み寄った。

男はようやく彼に気づき、素早く顔を上げ、微笑みかけた。やはり林隽の記憶通りの顔だった。...