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897話

その場に漂う空気が、まるで制御不能な刺激を放っていた。

「お兄ちゃんがここで働いてるの。チケット二枚くらい簡単に手に入れてくれるわよ!」

小柄な美女は意地悪く微笑むと、私の手を引いて楽屋へ向かった。そこで仕切り役らしき男性を見つけると、甘えたり強引に頼んだりして、VIPチケットを二枚せしめ、嬉しそうに私を会場内へ案内した。

立ち去る際、その男性が私に視線を送ってくるのが感じられた。彼の妹の手を引く私は、軽く微笑み返しただけで、そのまま背を向けた。

くそっ。

他人の妹を抱いておいて、そのお兄さんに目撃されるとは。ちくしょう、マジかよ!

表面上は何事もないように振る舞っていたが、心の中では既に...