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838話

「サラサラ」と水の音が響いてきた。私は浴室の入り口に無精に寄りかかりながら、湯上りの美人を眺め、ようやく心の均衡を取り戻した。

「遅かったな」

老人が昨夜の俺たちの行動を知らなかったら、あんな顔をしていたはずがない。二十数年大切に育てた白菜が一晩で豚に掘り返されたような表情は隠しきれず、その手は俺の頭を張り飛ばしたいほどだったんだろう。

「……」

彼女は行きたくないようだ。

俺も行きたくない。

でも行かないわけにはいかない。

「行こう」

俺は彼女の手を引き、一歩一歩、老人の執務室へと向かった。彼女は途中で何度も逃げ出そうとしたが、俺にしっかり引き止められた。

彼女のこんな姿は初めて見た。とても...