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712話

老人は慌てる様子もなく、まるで今日の天気について語るかのような穏やかな口調で話し始めた。先ほどまでの威圧感も消え、私はようやく冷静に考えることができるようになった。

「なぜ、ですか?」

天から降ってきた大きな幸運に頭を殴られたような感覚で、私は完全に方向感覚を失っていた。私の人生最大の望みといえば、十分なお金を稼いで白おばさんと妻たちを養い、それだけで満足するというものだ。正直なところ、野心などなく、一方の地を支配したいとも思わないし、権力の世界に足を踏み入れる気も更々ない。

その世界の闇は、普通の人が想像できるようなものではないことを私は知っている。

私はそんな世界に関わりたくない。...