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609話

「私はゆっくりと歩み寄り、彼の不満げな視線の中、彼の向かいの椅子に腰を下ろし、背筋を正した。彼がわざわざ私を呼んだのだから、きっと言いたいことがあるはずだ。

「雪莉との婚約を解消し、あの女とも完全に縁を切れ。道を戻るならば、まだお前を身内として扱ってやる」

老人の眉はきつく寄せられ、引き締まった表情、厳しい眼差し——すべてが彼の怒りを物語っていた。

道を戻る?

「ふっ、おじいさん、もう慣れたんですか?他人の事に口を出すことに、他人の人生を勝手に決めることに、命令すれば従わせることに?」骨の髄まで染みついた負けん気が騒ぎ出し、もはや素直で従順な後輩を演じることはできなかった。

老人は目...