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601話

私の手が書斎のドアノブに掛かり、力を入れると、カチリと音を立ててドアが開いた。振り返ることなく外に出ようとする。

「待て!」

足が書斎の敷居を跨いだ瞬間、趙程遠の声が響いてきた。口元に微笑みを浮かべ、満足げに振り返る。

彼は灯りの消えた書斎に立っていた。暗闇の中で彼の表情は見えなかったが、その両目は明るく輝いていて、探す必要もなくどこにいるか分かった。

趙家を後にする時も、結局は趙程遠が手配した運転手が私たちを送ることになった。ついでに、運転手をしばらく私たちに付けてくれることになり、省都に滞在している間はこの車を使わせてもらえることになった。帰る時には、そのまま彼を戻らせればいいだけだ。

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