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530話

彼女の細かな声がドアの隙間から漏れてきた。その時初めて気づいたのだが、学部長室のドアは完全に閉まっておらず、わずかな隙間が開いていた。彼女の声はそこから漏れ出ていたのだ。

「あっ!あぁっ!気持ちいい!」

どこを触られたのか、突然学部長の声が大きくなり、甲高い悲鳴を上げた。少し考えてみると、今は彼らの邪魔をしない方がいいだろう。スマホは明日取りに来ればいい。どうせ彼らが終わった後、私のスマホがまだ中にあることに気づいて、ちゃんと保管しておいてくれるはずだ。

そう考えて、紳士的に立ち去ろうとしたその瞬間、思いがけず男の声が聞こえてきた。

「初めてじゃないだろう、何をもじもじしているんだ。王...