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1166話

白姨に説明する気もなかった。

機嫌が良くなかったのを白姨はすぐに察したらしく、驚いたように振り返って私の顎を両手で包み込み、じっと目を覗き込んだ後で尋ねてきた。「気分が悪いの?」

「うん」

気分が悪かった。まるで子供の頃に飴を貰えなかった時のような気持ち。落ち込んでいて、何かが足りないような気がしてならなかった。

「白姨が埋め合わせしてあげる?」白姨の瞳が輝き、つま先立ちになって私の唇に近づくと、トンボが水面を掠めるようにそっと一回キスをした。優しさに満ち溢れていた。

「言っておくけど、あの人たちは私たちが手を出せないような人たちだから、普通に接するだけでいいの。あなたも知っているでしょう?過...