5話
「病室には四つのベッドがあり、劉の母親が借りている一つの他に、二つのベッドに患者と家族がいて、合わせて五、六人ほどいた。こちらの騒ぎを聞きつけ、みんな振り向いてきた。
特に、あの大男を見て、周囲の人々は眉をひそめた。
筋骨隆々とした大男は、明らかに手ごわい相手で、体格だけ見ても劉彬は敵わないだろう。
劉彬が無礼な言葉を吐いた時、皆は残念そうな表情を浮かべた。
「あの若いの、頭がおかしくなったんじゃないか？」
「あのタトゥーを見れば、関わるべきじゃないってわかるだろうに」
案の定。
がっしりした大男は一撃で劉彬を気絶させてしまった。
「彬彬……」
劉の母は恐怖で声が震えていた。
その瞬間、劉彬は突然目を開け、口元に笑みを浮かべ、拳を握りしめて振り上げた。
大男の顔には軽蔑の色が浮かんだ。劉彬の一撃など眼中になかったが、拳が胸に当たった瞬間、大男の顔から軽蔑の色が消え、恐怖に変わった。
ドン！
鈍い音が響いた！
控えめに見積もっても百キロはある大男が、劉彬の一撃で吹き飛ばされたのだ！
ガシャン！
大男の肥大した体は、自分の妻のベッドの側に落ち、周囲の物を壊した。肋骨が折れたのを感じ、口を開くと、鮮血が噴き出した。
病室内は一瞬にして水を打ったように静まり返った。
「うわ、マジかよ！」
見ていた人々はもちろん、劉彬自身も自分の力に震撼していた。
俺、そんなに力入れてないのに！
身体能力が人間の限界まで強化されて、ほんの少しの力でこんな威力が？
さらに恐ろしいことが起きた。
大男は口から血を吐き続け、止まらない。吐いて、吐いて、黒い内臓の欠片まで吐き出し、このままでは命を落としそうだった。
劉彬は顔色を失い、心の中で思った。「人を殺せば命で償うんだぞ！このデブはイキってたとはいえ、死ぬ必要はないだろ！みんなの目の前で、もし死んだら、俺はどうなるんだ？」
大男の息が絶え、冷たい声が劉彬の脳内に響いた。「魔方の威厳を冒した劣等生物を撃破、任務完了、報酬：なし。戦場の清掃を開始」
声とともに、大男の体は黒い塵と化し、風に吹かれるとあっという間に消え去った。
時間が止まったかのように、周囲の人々は記憶を失ったようで、場面は二分前に巻き戻った。
「お母さん、帰ろう」
劉彬は母親の手を引いて病室を出た。隣の白くて太った女性が鼻をつまんで言った。「あのド田舎者たち、やっと出て行ったわね、ふん！」
彼女は、夫がすでに死んでいることなど知る由もなかった。
劉彬は母親を実家まで送り、三日間滞在した後、都会の自分の借り部屋に戻った。
ベッドに横たわり、意識を沈めると、黒い虚空の中に白い魔方が静かに浮かんでいた。
劉彬はそれに触れようとしたが、何の反応もなかった。
うとうとと、劉彬は夢の中へと入っていった。
ドンドンドン！
翌朝早く、劉彬はドアを叩く音で目を覚ました。
「劉彬、起きなさい！家賃を払いなさい！」
大家の王おばさんの声は、まるで獅子の咆哮のように、ドアや窓を揺らした。
劉彬はため息をついた。自分が乗り移った死んだ男は、本当に貧乏で、家賃すら払えないのだ。
「王おばさん……」
劉彬は気まずそうに笑った。
ドアを開けると、尖った顔つきの中年女性が腰に手を当てて立っていた。「もう戻ってこないかと思ったわよ。家賃はもう半月も滞納してるのよ。これ以上払わなければ、鍵屋を呼んで、あんたの部屋の物を全部外に放り出すわよ」
「やめてくださいよ、王おばさん。この前、車にはねられて、退院したばかりなんですよ。半月の家賃なんて、たいした金額じゃないでしょう。そんなことで私たちの関係を壊す必要ありますか？」
「関係？」
王おばさんは鼻で笑い、軽蔑した様子で言った。「あんたと私に何の関係があるっていうの？一年半もここを借りて、一度でもきちんと家賃を払ったことある？若いのね、貧乏なのは問題じゃないわ。でも貧乏なのに言い訳ばかりするのは良くないわね。お金がないなら二つ三つ仕事をすればいいの、苦労して疲れても、人の顔色を伺うよりましでしょう！王おばさんが情けないって言わないでよ、あんたの成長を手伝ってるだけなんだから！」