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311話

サハム。

北漠で砂漠に最も近い都市だが、この地の現代化の進展は依然として全国の最前線を行く。この都市だけを見れば、内陸部の都市との違いなど微塵も感じられない。

道中、慕容鐸は秦霊児に熱心に振る舞っていた。これは慕容家そのものが秦家の分家筋、つまり外戚の一族だからだ。この数年間、秦家の庇護の下でサハムに足場を固め、白家に取って代わった経緯がある。

だから秦霊児は慕容家のお嬢様でもあり、慕容鐸としても丁重に接さねばならなかった。

しかし、秦霊児と白公子の一目で分かるような親密さを目の当たりにして、慕容鐸の胸中には不快感が渦巻いていた!

「あの貧乏人が、どうして霊児のような天才の娘に手を出...