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54話

いつも眠れない夜に、趙柱根は老王のところへ酒を飲みに行くのが常だった。あの爺さんは酒量がなかなかのもので、趙柱根とも話が合った。

彼らの住まいは高層ビルではなく、一軒ごとに独立した建物だった。趙柱根はわざわざ階段を降りて行くのではなく、バルコニーから老王の家の二階へ直接よじ登っていった。以前からずっとこの経路で通っていたのだ。正面玄関から入るのが面倒くさいと思っていたからだ。

趙柱根がようやく向こう側に渡ったところで、まだ室内に入る前に、突然部屋から女性の甘ったるい声が聞こえてきた。「鍵、開いてるわよ」

その声は黄莉莉のものとは違うように聞こえた。趙柱根は急いで窓の外に身を隠し、中を覗き...