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1018話

「あの日、私は郊外に行ったの」

温暖はゆっくりとあの日の出来事を思い出しながら、静かに語り始めた。

「可愛い子、辛い思いをさせてしまったわね」

温暖の母は、自分の娘が誘拐犯に拉致され、あわや暴行されそうになったと聞いて、悲しみの涙を流した。

「お父さん、彼は人殺しかもしれないけど、私を救うためだったの。それに、もう一つ知らないことがあると思うから、続けて話すわ」

温暖は黙り込む父親を見つめながら、再び語り始めた。父の心を動かせることを願って。

「この前、列車が襲われた事件のこと、みんな知ってるわよね。でも、列車の乗客を救った人が誰か知ってる?」

温暖は父親に問いかけた。

「疑わないで。...