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第92話

オースティン視点

僕は群衆の中をチェイスを探して目を凝らした。そこで彼を見つけた。ステージからそう遠くないところに。

チェイスも微笑み返してくれて、大きな歓声や点滅するライト、空気中に漂うエネルギーがあるにもかかわらず、その瞬間、まるで僕たち二人だけの世界のように感じられた。

マイクをしっかりと握り、自信が湧き上がるのを感じた。彼がここにいる。僕を見ている。応援してくれている。

深呼吸して、バンドメンバーに目をやり、小さくうなずいた。時間だ。

再び観客に向き直り、マイクに向かって話した。「さて、次の曲は…ちょっと特別なんだ」僕の視線はチェイスに戻り、笑顔が広がった。「気に入っ...