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第78話

チェイスの視点

オースティンの背中を見つめながら、胸が締め付けられる感じがした。

交通事故。記憶喪失。

すべてが突然理解できた。

彼が私のことを覚えていないのは、忘れることを選んだからではなく、私を人生から消し去りたかったからでもなく、物理的に覚えていられなかったからだ。

なぜか、ほっとした。

オースティンがあの記憶を失っていなければ、彼は私のことを覚えていただろう。すべてを覚えていただろう——私たちの幼少期、大人になったら必ず再会するという約束を。

「とにかく」彼は歩くのをやめ、振り向いて私と向き合った。

「君が話していた少年…あの時いじめっ子から君を救った少年の名前...